今回は、くも膜下出血の後遺症に多い「水頭症」とはどんなものなのか、どのような症状があるのか、後遺症や予後についてもわかりやすく解説します。
水頭症とは、文字通り、頭に水がたまってしまう病気のことを言います。子供でも発症することがありますが、成人ではくも膜下出血の後遺症として起こることが多い病気です。
代表的な症状として「歩行障害」「認知症」「尿失禁」などがあります。

水頭症とは
人間の脳は、頭蓋骨の中で脳脊髄液という水に浮いています。脳の内部にも、脳室という空間があり、こちらにも脳脊髄液が流れています。この脳脊髄液には、脳を外部から守ったり、栄養やホルモンを運んだり、老廃物を除去したりと様々な役割を担っています。脳脊髄液は常に入れ替わっており、毎日500 ml分が新しく作られて、同じ分だけ吸収されています。
正常な状態では、脳脊髄液は、脳の周りや脳室を循環しており、その循環量は150 mlと言われています。何らかの原因でこの流れが悪くなり、脳脊髄液が多量にたまってしまうことによって、脳を圧迫する状態を「水頭症」といいます。
水頭症のタイプについて
水頭症のタイプとして「非交通性」と「交通性」があります。
非交通性水頭症は子供に起こりやすく、脳脊髄液の流れの中で、どこかでせき止められている状態になっているイメージです。たまってしまった脳脊髄液が脳を圧迫します。数は少ないですが、成人でも脳腫瘍などで起こる場合もあります。
高齢者に多いのは、交通性水頭症です。これは、流れ経路には問題がないのにもかかわらず、脳脊髄液が吸収されにくくなり、脳脊髄液の循環量が多くなってしまう状態です。
何らかの原因で、脳脊髄液の吸収機構がダメージを受けることによって起こる続発性が多いですが、突然発症する特発性もあります。
くも膜下出血では、発症の1~2カ月後に、30%程度の割合で正常圧水頭症を発症するといわれています。急性期の状態から落ち着いたあとも、注意していく必要があります。
水頭症(正常圧)の症状とは
ここからは高齢者に多い、「正常圧水頭症」について詳しく見ていきます。
正常圧水頭症の代表的な3つの症状は、「歩行障害」「認知症」「尿失禁」の3つです。
これらは、数カ月から数年単位でゆっくりと進行します。そのため老化の症状と間違えられやすく、長期間放置されている場合もあります。
初期頃に歩行障害が出現し、「歩幅が小さくなる」「すり足歩行になる」「歩行が不安定になる」などの特徴がみられます。その後、認知症のような物忘れや自発性の低下が出現し、徐々に活動性が下がって無気力・無関心な状態になります。尿失禁は3つの症状のうち最も遅く現れるとされます。
水頭症の治療
水頭症は基本的には手術療法が必要となります。
具体的には、頭にたまった余分な脳脊髄液をおなかへ流すチューブをいれる「シャント術」が行われます。一般的には、頭と腹腔をつなぐチューブを体の中に挿入します(V-Pシャント)。また、脳脊髄液は、背骨の神経の周りにも流れており、そこから腹腔へチューブをつなぐ方法もあります(L-Pシャント)。これらの手術は、症状を改善させることを期待して行います。
水頭症の後遺症・予後
正常圧水頭症は、手術を行ってもすぐに完治するものではありません。手術後も、シャントから排出される脳脊髄液の量が適切になるように、調整する必要があります。また、退院後に症状の改善が見られなくなり、元の状態に戻ってしまうこともあります。その場合は、シャントの閉塞がないかどうか、チェックする必要があります。
また、3大症状の中では、歩行障害の改善率が最も良好とされています。反対に認知症や尿失禁の改善率は、歩行障害に比べるとやや劣るとも言われています。そのため、治療開始が遅くなった場合は、認知機能の低下や尿失禁などの症状が後遺症として残ってしまう可能性もあると言われています。
まとめ
今回は水頭症の原因と症状、くも膜下出血の後遺症の関係について解説しました。
水頭症のなかでも、とくに正常圧水頭症は早期に発見・治療ができれば、症状の改善を期待できる病気です。少しでもおかしいと思った際には、早めに病院を受診しましょう。
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