脳ドックで多発性脳梗塞発性脳梗塞の診断を受けたという方もいるのではないでしょうか?
特に自覚症状が無くてもいつの間にか多くの脳梗塞が起こっているのが多発性脳梗塞と言われています。今回は、多発性脳梗塞について解説していきたいと思います。
多発性脳梗塞とは?
多発性脳梗塞とは、脳梗塞が多数発生している状態のことです。その特徴について紹介します。脳梗塞には二つのタイプがあり、一つは脳の血管が動脈硬化によって狭くなることで起きる「脳血栓」です。もう一つは心臓にできた血栓が脳の血管に流れて詰まる「脳塞栓」です。このうち、脳血栓の中でも脳の深く細い血管が詰まって起きる脳梗塞を「ラクナ梗塞」といいます。
ラクナ梗塞
多発性脳梗塞は、ラクナ梗塞と呼ばれるタイプの脳梗塞が多数できます。一つの梗塞が10〜15mm程度と小さいこと、また脳の深い所にできることが特徴です。
ゆっくりと進行する
それぞれの梗塞巣が小さいこともあり、一気に症状が進行することがありません。階段状と呼ばれることもありますが、少しずつ、そして段階的に症状が進みます。症状が目立ちにくいため、無症候性脳梗塞と言われることもあります。
特徴的な症状がある
できる場所に特徴がありますので、その症状にも特徴があります。大脳基底核や放線冠と呼ばれる部位にできることが多く、左右対象に梗塞が多発しています。小刻み歩行といったパーキンソン病にみられる症状や物忘れなどの認知機能が低下などの症状がみられることが特徴です。

ラクナ梗塞の症状
一般的な脳梗塞と同様、半身の脱力(片麻痺)、半身の痺れ(感覚障がい)、呂律の周りにくさ(構音障害)が主な症状ですが、小さな脳梗塞なので症状が軽いこともあります。また、意識障害が起きることはありません。片麻痺や感覚障がいなどの大きな症状がなくても、脳のいろいろな場所に再発を繰り返すと、認知症、失語、嚥下障害の原因となることがあるので、注意が必要です。
高齢者の場合、病院での脳の検査で、無症候性脳梗塞が発見され指摘を受けることがあります。
ラクナ梗塞の治療
手術が必要になることはなく、基本的に内科的治療を行ないます。主な治療には、血液の固まりができるのをおさえる薬(抗血栓薬)、脳細胞を保護する薬(脳保護薬)などが使われ、抗血栓薬には点滴薬と飲み薬があります。発症して4~5時間以内、かつ脳がまだ壊死していない場合は、「t-PA」という血栓を溶かす薬(血栓溶解剤)が使えるため、できるだけ早く病院を受診することが大切です。加えて、機能回復のためにリハビリテーションを行なうことも重要な治療の一つです。
多発性脳梗塞の症状
一般的な脳梗塞では、突然手足が動かなくなる、感覚がわからなくなるなど、はっきりとした症状が出ます。しかしラクナ梗塞が多発する多発性脳梗塞には、目立った症状がなかなか表れないという特徴があります。また症状にも以下のような特徴があります。①認知症一気に認知症の症状が出るのではなく、徐々に進行する特徴があります。②言語障害③歩行障害④嚥下障害
また、ラクナ梗塞は、安静時、特に眠っている間に起こる特徴があります。
段階的に症状が悪化して行きますが、特に朝起きると症状が進行しているという特徴もあわせ持ちます。
多発性脳梗塞の小刻み歩行
多発性脳梗塞の症状のひとつに、「小刻み歩行」というものがあります。この特徴的な歩き方は歩幅が非常に小さく、膝をあげることなく歩きます。多くの場合、前傾姿勢となり前に倒れ込む(突進)したように歩きます。小刻み歩行は、多発性脳梗塞に伴って認めることがあります。その他、パーキンソン病や水頭症でも同様の症状があります。

早期発見のポイント
・左右どちらかの半身の脱力:片麻痺
・左右どちらかの半身の痺れ感:感覚障がい
・呂律が回らない:構音障がい
上記のような症状が急に起きることが、ラクナ梗塞の特徴です。
小さな脳梗塞なので症状は軽いこともありますが、このような症状が急に起きたときは、一刻も早く病院を受診してください。また、「一過性脳虚血発作(TIA)」といって、このような症状が数分から1時間程度で自然に治まることもあります。これは脳梗塞の前兆であり本格的な脳梗塞を発症することがありますので、症状がよくなっても早期に病院を受診するようにしましょう。
まとめ
多発性脳梗塞は、気付いた時にはすでに多発しており、治療も難しい脳梗塞のため、予防することが大切です。高血圧をはじめとするラクナ梗塞の危険因子がある場合は、危険性を少しでも減らすよう心がけましょう。何か違和感があったら、病院へ診察することをおすすめします。
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