脳卒中・脳梗塞・脳出血後に多い半身の「しびれ・痺れ」について

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脳梗塞の後遺症として「しびれ・感覚障害」があります。今回は、脳卒中の後遺症「しびれ」について解説していきたいと思います。

脳出血の後遺症「しびれ(麻痺)」について

「しびれ」は、大きく分けて手足に力が入りにくくなる「運動麻痺」と、感覚が鈍くなったり温度や痛みを感じにくくなる「感覚麻痺」があります。
運動麻痺は、脳から身体を動かす命令を伝える運動神経の経路に障害が起こり、手足の筋肉に思い通りに力が入らなくなったり、筋肉が衰えてくることから発生します。
一方、感覚異常は、手足の感覚を脳に伝える感覚神経の経路に障害が起こることで発生します。原因によって、運動・感覚のどちらかが発生することもありますし、両方に問題が発生することもあります。
運動神経や感覚神経が障害される原因は、怪我による末梢神経の損傷や脳卒中(脳梗塞や脳出血)、脊髄の病気などがありますが、どこで障害が起きたかによってその症状は様々です。
中でも脳梗塞・脳出血により起こる「しびれ」は、半身の運動・感覚が同時に障害されることが多く、症状の訴え方も人によって多岐に渡ります。

しびれ(麻痺)のメカニズム

「しびれ」は、ピリピリ・ズキズキ・麻酔がかかっているなどのように表現されます。

このしびれは、脳出血や、糖尿病などの内科疾患、神経の圧迫など、様々な原因が考えられます。

しびれは大きく分けると2つに分類することができます。

脳や脊髄が原因で起こった「しびれ」の場合を中枢性、手足や体の神経や血管(血流)が原因で起こった「しびれ」の場合を末梢性と呼びます。脳出血の後遺症は中枢性のしびれに当たります。

中枢性と末梢性のしびれの違いやそれぞれのメカニズムについて詳しく解説していきたいと思います。

中枢性のしびれについて

中枢性のしびれは、脳出血や脳梗塞などによるものや、交通事故や転倒による脊髄損傷、脳や脊髄の腫瘍によるものなど様々な病気が原因で起こります。

また、脳の中で感覚は、視床と呼ばれる部位が司ります。視床は、手足や体で感じた情報の中継地点とされています。さらに視床は、脳出血を起こす部位全体の30~40%を占めます。

末梢性のしびれについて

末梢性のしびれは、代表的な例として、正座を長時間行ったあとに、足がしびれることをいいます。

これは、正座した際に、下腿や足先を支配している末梢神経が圧迫を受けたことが原因で起こります。

また、末梢性のしびれを引き起こす病気としては、胸郭出口症候群、手根管症候群、橈骨神経麻痺、肘部管症候群、腓骨神経麻痺、神経根症、糖尿病などといったものが挙げれ、身体の中心よりも四肢に痺れの症状が出現します。

感覚低下(感覚鈍麻・感覚脱失)

触ったり、動かしたりといった手足の感覚を認識しにくい。あるいは、動かしているという実感がない、どの程度動いているのか分からないといった身体認識が薄くなる。これらの症状は障害部位や原因によって程度が異なります。

・感じ方が鈍くなる:鈍麻

・全く感じない:脱失」

と表現されています。

例)触られても気づかない。熱い物に触れても温度を感じにくいため火傷してしまう。怪我をしていても気づかない。硬い床に立っているのに、「スポンジの上にいるように感じる」。などです。

錯感覚

触ったものの本来の感覚とは異なった感覚として認識される。例)布団に触れたのに、痛みやぴりぴり感として感じる等

異常感覚

何かに触れた、触られたのではなく、自発的にみられる感覚。
例)何もしていないのに、「ビリビリする」「ジンジンする」などを感じる等

感覚過敏

本来の感覚以上に感じてしまう状態。
例)触覚過敏……触れただけで強い痛みと感じる
痛覚過敏……痛みを強く感じる
温度覚過敏…寒い時期になるとジンジンとした感覚や痛みを感じる

上記の中では、感覚低下が最も身体を動かす上での障害となりやすく、そこに異常感覚や感覚過敏が加わることで更に運動が阻害されるだけでなく、安静時にも不快感や苦痛を感じる原因となります。

脳出血のしびれ(麻痺)は治る?

脳出血後のしびれについては、発症時に最も起こりやすく、脳出血のうち視床出血の方の30%がしびれを感じているという報告があります。

脳卒中後中枢性疼痛視床痛と呼ばれることが多く、神経障害性疼痛の中でも難治性の後遺症として知られ、脳卒中患者の(推定発症率)8~11%に影響を及ぼします。

発症は、脳卒中発症直後から数年経過してまでと様々です。軽い刺激でも疼痛が誘発されますので、日常生活に大きく影響してしまいます。

視床痛

痛みの特徴は、一定又は断続的で、灼熱感、凍結感、針で刺されるような鋭い痛み、引き裂かれるような激しい痛み、体の芯からうずくような痛み等と表現されます。他の症状は曖昧で特徴付けが難しく、早期診断が特に困難なようです。

痛みや感覚異常だけでなく、かなりの精神的苦痛を経験する可能性が高く、精神的に落ち込んでしまうことも多いです。視床は、脳のある領域から別の領域へ信号を中継する場所です。脳が脳卒中のために体の患側に混乱したメッセージを送信することによって引き起こされます。

脳出血の後遺症「しびれ・麻痺」に対するリハビリテーション

脳出血後のしびれ(麻痺)に対しては、リハビリテーションや、薬物療法、外科的治療法(手術)があります。

①薬物療法

内科的治療法として、内服薬が処方されることもあります。

②機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation:FES)

麻痺のある手足の筋肉に電気を流し、電気の力で筋肉を動かす方法です。

さらに、歩く際に、足の筋肉に電気を流して、歩きやすくしていきます。

健康器具であるような低周波治療器とは異なり、電気の流れるタイミングなどはコンピューターによって制御されています。この治療を受けたことで、歩行能力が改善したという報告もされています。

③姿勢や筋肉のアンバランスの修正

脳梗塞や脳出血では、麻痺の問題だけではなく、姿勢の問題も引き起こされます。この問題がしびれと関連していることがあります。姿勢が崩れたり、捻じれたりすると、脊髄内の神経を圧迫して、しびれを引き起こします。また、姿勢の崩れは一部の筋肉への負担を増やし、しびれを引き起こすこともあります。さらに、姿勢の崩れは、体に入る感覚情報を変質させるため、感覚障害といった症状をさらに増悪させ、結果しびれが引き起こされることもあります。姿勢の崩れを修正し、効率的な動きを取り戻していくことは、しびれに対して有効な場合があると思われます。

まとめ

今回は、脳出血の後遺症の「しびれ(麻痺)」に焦点をあててしびれのメカニズムや回復過程、予後、治療方法について紹介させていただきました。

強いしびれ(麻痺)は、気持ちを落ち込ませてしまったり、生活に影響を及ぼすなど悪影響を与えてしまう症状です。もし、脳梗塞の後遺症としてしびれや、手足の動かしにくさを感じている方がいましたら、当店までご相談ください。

TEL:080−3366−8199

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