脳卒中を予防するためには

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日本人の3大死因に数えられる脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)です。

脳は生命をつかさどる、最も重要な臓器です。脳にはたくさんの血管が走っていて、酸素や栄養を供給しています。これらの血管が詰まったり、破れて出血したりして起こる病気を脳卒中といいます。詰まるタイプが脳梗塞。出血するタイプが脳出血です。

脳梗塞 − 血管が詰まるタイプ

脳梗塞とは、脳血管が閉塞したために起こる疾患です。脳梗塞ができた部分は酸素と栄養が行き渡らなくなるために脳細胞が破壊されてしまいます。

・脳塞栓:心臓にできた栓が剥がれて脳の血管をふさぐために起こる

・脳血栓:動脈硬化のため血小板がかたまった血栓が脳に詰まり血液が届かなくなる

脳出血 − 出血するタイプ

脳出血とは、脳内部の動脈が切れ出血することで生じる疾患です。脳出血が生じることで神経細胞が死んでしまいます

・くも膜下出血:脳動脈にできたコブが破れ、くも膜下腔に出血

・脳出血:細いの脳血管が破れて出血する

脳卒中の症状

いずれも、片麻痺や言語障害、意識障害、高次脳機能障がいなどの症状が出現します。厚生労働省の調査によると、令和2年(2020年)度に亡くなった方のうち7.5%(10万2956人)が脳卒中が原因によるものとされています。

再発しやすい疾患であり、発症初年度の再発率は12.8%とされています。年を取るにつれて発症する確率が増加する傾向にあり、10年以内の累計罹患率(10年以内に再発する確率)は51.3%と言われています。[1]

初回発症時と比べ、再発時の方が重度の後遺症が残りやすいです。再発予防はとても重要な課題となります。発症を回避するためには、発症リスクを回避することが重要です。

脳卒中の発生を高めるリスク

脳卒中の主な原因は動脈硬化とされています。動脈硬化を引き起こすとされる高血圧症、高脂血症、糖尿病、喫煙などの生活習慣病がリスクを高める要因となっています。

高血圧

血圧は脳卒中の最大の危険因子であり、心臓病など他の病気とも絡んでくる大変重要な項目だからです。高血圧は、血圧が140/90mmHg以上を指している状態と定義されており、血圧が高めの方は脳卒中発症のリスクが高くなるとされています。合併症をお持ちの方は130/80 mmHg未満、一方で後期高齢者は150/90 mmHg未満を目標としても良いとされています「脳卒中治療ガイドライン」

高血圧では全身の血管に絶えず負担がかかってしまい、血管は弾力を失ってしまいます。そうした状況では、血管の中が細くなり血流を阻害してしまったり、最悪の場合破れたり詰まったりしやすくなります。

血圧を下げるには、塩分制限や脂質(飽和脂肪酸)の摂取を減らす一方で、全粒粉の穀物やくだもの、野菜を中心とした食生活を見直すことが効果的です。

糖尿病

糖尿病は血糖値をさげるインスリンというホルモンの分泌量が不足したり、ホルモンの働きが悪くなることで、血糖値が高い状態が長期間続く病気です。

高血糖になると、脳の血管が傷つきやすくなり、傷ついたところにプラークと呼ばれる塊が形成されます。プラークは血管内を圧迫し、血流速度が遅くなってしまうと脳内の血流が途絶えてしまう“脳梗塞”が発症しやすくなります。

日本人はインスリンの分泌量が少ない傾向にありますが、食生活の欧米化が進んだことで摂取カロリーの増加が急速に高まり、近年では糖尿病を発症する方が増えています。

脂質異常症

脂質異常症とは、血中の中性脂肪やLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値が高値、またはHDLコレステロール(善玉コレステロール)が低い状態のことです。

脂質異常症の主な原因は、運動不足や偏った食事バランス、肥満などが挙げられます。

健康診断にてLDLコレステロールの値が高いと指摘を受けた方は食事を見直す必要があります。特に、脂肪の摂取を減らす必要があり、豆類や芋類、海藻類、キノコ類、根菜類など、コレステロール値を下げる食品を積極的に摂取していくことが推奨されます。

不整脈

心臓の拍動をコントロールする器官にトラブルが生じると不整脈が生じます。
拍動が早すぎたり遅すぎてしまうと心臓内に血栓が生じやすくなり、それが脳血管に詰まってしまうと、心原性脳塞栓症と呼ばれる脳梗塞を発症します。

不整脈が生じている場合、外科手術やペースメーカーの設置、場合によっては抗凝固薬(血栓が出来にくくなる薬)によって血栓を予防することが一般的です。しかし、血圧が高すぎる方が抗凝固薬を服薬すると、脳出血を発症しやすくなる場合があるため注意が必要です。かかりつけ医の指導を守り、薬の飲み忘れ等がないようにご注意ください。

不整脈が生じる代表的な疾患としては心房細動が挙げられ、これを予防するには高血圧や肥満の改善、アルコールを摂取しすぎることやカフェインの過剰摂取を控えることが大切です。また適度な運動も推奨されています。

喫煙習慣

タバコの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素などの有害物質は、血管を収縮させたり、心拍数の増加や血圧の上昇などを引き起こします。また動脈硬化や心筋梗塞の発症を高める要因と言われ、1日1本のペースでも発症リスクが1.4倍以上にもなると言われています。

禁煙者と比較して、アジア人の喫煙者は脳卒中発症の可能性が2倍以上になると述べられていますが、3年間の禁煙を継続すると急激に発症リスクが低減するとされ、禁煙期間が長ければ発症のリスクを減らすことに効果的との報告もあります。

食事:塩分、脂肪、水分

塩分の摂り過ぎは高血圧につながりますので、塩分控えめを心掛けてください。日本高血圧学会の1日の推奨量は6g未満、厚生労働省の基準では1日の目標量が男性8g、女性7gです。脂肪はコレステロール値、糖分は血糖値と関係しています。それぞれ摂り過ぎに注意が必要です。他には、脱水症状を起こすと血液もドロドロになって血流に淀みができやすく、脳卒中につながるリスクも高まります。特に夏の暑い時期などは水分を十分に摂取するよう気を付けましょう。また寒い時期はトイレに行く回数を減らすため、水分を控える方もいますがこちらも注意が必要です。

運動習慣

運動も、継続することが大切です。毎日のウォーキングなど有酸素運動が効果的です。普段から、活動と休息のバランスが取れた生活リズムを維持するよう工夫してください。
肥満もリスクを高める要因の一つとなります。標準適正(BMI18.5から25未満)を目指しましょう。

睡眠とストレス

疲労やストレスも体の調節機能のバランスを崩し、健康に悪影響を及ぼします。十分な睡眠をとることで疲労を回復させ、朝起きて活動するというリズムを大切にしましょう。

脳卒中予防の4大ポイント

  1. 30代から自分の血圧を知り、コントロールする心がけを
  2. 塩分控えめの食生活と、コレステロールを減らす
  3. 仕事を離れてリラックスできる趣味を持つ。適度な運動も大切
  4. 40歳になったら脳ドックを受診し、脳の健康状態を常に把握する

脳卒中の前兆は?こんな症状には注意を!

  • 突然出現した言葉の出にくさ、ろれつが回らない
  • 片側の顔、手足のしびれ、または脱力感。
  • 突然出現した片目、あるいは両目が見えない、見えにくくなる症状。
  • 物や人が二重に見える
  • 貧血や耳の病気がないのに突然出現しためまい
  • 歩けなくなるほどのふらつき、歩行が不自由
  • 原因不明の激しい頭痛や強い眠気
  • 風邪でもないのに頭痛
  • 急に生じためまい
  • 箸が上手に使えなくなった

脳梗塞の前兆?

一過性脳虚血発作についてはこちら

まとめ

脳ドックで早期発見し、普段の生活を見直せば、脳卒中は予防することができます。これらの症状が、突然に起こるのが脳卒中の特徴です。数分で治まることもありますが、決して侮ってはいけません。すぐに専門の医療機関を受診しましょう。

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