脳梗塞後の片麻痺者に多い、肩関節の亜脱臼について

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脳卒中後の方で肩関節の亜脱臼にお困りの方はいませんか?

今回は、脳卒中後の亜脱臼後について解説していきます。

肩関節の亜脱臼とは

亜脱臼とは肩関節が正常な範囲から少し外れた状態のことを言います。正常な肩関節は上腕骨が肩甲骨のくぼみに、はまっている状態です。肩関節はさまざまな方向に動けるようにわずかな隙間があります。亜脱臼とはこの隙間が広がっている状態です。亜脱臼した状態で肩の運動を行ってしまうと、この関節が安定せず、痛みが発生してしまう場合もあります。

片麻痺が原因で起こるのはなぜ?

亜脱臼は脳卒中後の片麻痺や感覚障害が影響して生じることがあります。麻痺の中でも弛緩性麻痺が大きく関係しています。弛緩性麻痺(しかんせいまひ)とは脳卒中発症後、間もないときに起こる状態で、手・腕を動かそうとしても筋肉を働かせることができず、肩から腕がぶら下がった様な状態のことです。

弛緩性麻痺になり、肩周りの筋肉が緩むことで、腕が全体がぶら下がっているような状態となり亜脱臼が生じやすくなるのです。その他の問題として感覚障害や半側失認があると、寝返りや起き上がる時に肩が体の下敷きになったり、肩に負荷がかかっていることに気づかずに、無理な体勢となり亜脱臼を引き起こすこともあります。

亜脱臼と運動麻痺について

脳卒中片麻痺患者様の肩関節亜脱臼は、発症後の筋緊張が低い時期あるいは筋が弛緩している時期に起こります。

肩周りの筋肉が弛緩する(筋肉に力を入れられなくなる)と腕が重力に負けて垂れるようになります。

垂れた状態になることで肩の骨が重力に引っ張られて亜脱臼が起こります。脳卒中になり脳と脊髄をつなぐ神経が損傷されると、指令が伝わらなくなり、手足を動かせなくなってしまいます。筋肉の張りもなくすごく柔らかい状態です。この状態が運動麻痺という状態です。

痛みがあるときはどうしたらいいのか?

ここからは片麻痺患者の亜脱臼に対する対処法や、やらない方がいい動作について解説します。亜脱臼を生じた時に痛みがでる原因についてもみていきましょう。

亜脱臼に痛みはあるの?

亜脱臼は痛みがでる方もいますが、気づかずに生活を続ける方もいらっしゃいます。痛みの有無の差はあまりよくわかっていませんが、亜脱臼によって肩関節の筋肉が損傷することによって引き起こるのではないかと考えられています。亜脱臼状態で放置すると、運動が制御され、間違った肩関節の動かし方を続けてしまい、肩を痛めてしまうことに繋がります。肩が動かしにくい、違和感があるといった症状があれば早めに主治医に相談しましょう。

痛みがある時の対処法

肩関節に亜脱臼が起こると、腕が垂れ下がった状態になります。この状態のままだと、肩周辺の筋肉や靭帯が伸び、痛みを伴うこともあります。肩関節の亜脱臼の方、全てに疼痛を引き起こすわけではありません!亜脱臼した状態(関節内の状態が正常でない状態)のまま動かすことで肩の筋肉や靭帯等の過度な伸張や、動かしたときに本来ぶつからない所がぶつかったり、挟み込まれたりするストレスが生じます。そのため、少しずつ小さな損傷を引き起こし、肩関節の疼痛が生じてしまいます。腕の重みで肩が垂れ下がった状態は肩関節にも負荷がかかってしまうので、肩が下がらない体勢を保持することが必要です。

片麻痺患者への避けた方がいい動作

片麻痺を生じながら亜脱臼になった場合、肩関節や肩周辺の筋肉に負荷がかからないようにしましょう。

<肩関節亜脱臼の禁忌動作と注意点>

  • 痛みや骨がぶつかる感じがしたら運動を注意する
  • 腕を高く上げるような(投球)動作は行わない
  • 麻痺側へ体重を乗せたときに肩が下がらないようにする
  • 洋服の着脱時や入浴時に(介護者や家族が)手を引っ張らない
  • 座りなおしなどの介助をするときに腕を後ろに引っ張らない

片麻痺が生じると、姿勢が左右非対称になりやすいです。体の歪みが発生することで筋力が制限され、亜脱臼になる可能性も高まります。なるべく正しい姿勢を保てるように日常生活から意識することも大切です。

肩の亜脱臼の検査方法

続いて、亜脱臼の検査方法について紹介します。

  • レントゲンによる検査
  • 超音波による検査
  • 触診による検査

がありますが、触診による検査でしたが自宅でも確認できます。

片麻痺患者の亜脱臼にリハビリは必要?必要なリハビリと注意点

肩関節を安定させるためには、肩周辺の筋肉へのアプローチが重要になってきます。具体的にどのようなリハビリを行うかみていきましょう。

片麻痺患者の亜脱臼に対するリハビリ

  • <電気療法>

亜脱臼に対して、電気刺激を行うことは有効(日本脳卒中学会から出されている脳卒中治療ガイドライン2021)であると言われています。麻痺側の末梢神経と直接刺激することで、麻痺側の動作改善は痛みの軽減を行います。

ターゲットとする筋肉は棘上筋、三角筋後部線維に加え、上腕二頭筋長頭にも電気を追加することで、およそ13mmあった亜脱臼がおよそ6mmまで改善したことも報告しています。

  • <筋力トレーニング>

肩関節周辺の筋肉を強化することで、筋力低下を防ぎ、安定性を向上させます。肩を上下に動かすトレーニングなどを行いますが痛みや違和感を感じたら、すぐに中止しましょう。

 ・<装具療法>

亜脱臼に対してアームスリングなどの『肩装具』の肩甲骨に上腕骨を固定する装具です。

スリングを使用することで、弛緩期(肩に力が入らない状態)では移乗や歩行中に、

 ①動作を行いやすくする

 ②腕をぶつけたり、過度に逸脱した方向へ動かすような事を防ぐ事ができる

その他に三角巾については、肘関節を曲げたまま固定するため、長期間の使用では肘関節が固まってしまうのではないかという懸念もされています。三角巾は布さえあればいつでも始められるという手軽さがあるのですが、デメリットもありますのでリハビリの担当者と相談しながら総合的に判断していただけたらと思います。

  • <姿勢改善>

片麻痺や亜脱臼の痛みがあると、姿勢が左右非対称になりやすくなります。正しい姿勢を意識した運動や、正しい姿勢を取りやすいように補助装具を使う場合もあります。

片麻痺患者の亜脱臼リハビリの注意点

片麻痺患者さんへの亜脱臼のリハビリは、症状の程度や痛みの有無によってアプローチを変える必要があります。

亜脱臼により痛みや悪化の恐れがある場合は、亜脱臼に対するリハビリを積極的に行う必要があります。一方、軽度で痛みのない場合は、固定するなどの処置を施し、手の運動機能改善を行う方が後遺症改善により効果があるかもしれません。

亜脱臼治療にはさまざまなアプローチがあるので、主治医と相談し、患者さんの症状にあったリハビリを行いましょう。

まとめ

片麻痺の患者さんが肩の痛みを訴えることは多く、最も多い原因の1つに肩関節の亜脱臼があります。

亜脱臼自体に痛みがないことも多いですが、放っておくと肩周辺の筋肉や靭帯を傷つける場合もあります。片麻痺患者さんが亜脱臼を生じた場合、禁忌動作を把握し、症状悪化防止に努めましょう。動かさない事は、状態を悪化させる可能性があります。

亜脱臼はすぐに改善できるものではありませんが、ゆっくりと着実に進歩し、最終的にはより良い動きにつながります。片麻痺患者さんの亜脱臼に対するリハビリには、さまざまなものがあります。患者さんご自身の症状に合わせた最適なリハビリを行うことが大切です。亜脱臼は適切なリハビリで疼痛緩和や改善が見込めます。専門家による各個人にあったリハビリをお求めの場合は、ぜひ当店へご相談ください。

TEL:080−3366−8199

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