こんにちは。訪問自費リハビリの庭野です!
今日は寝たきりの方を介護するときに気をつけたいのが拘縮(こうしゅく)について解説していきます。
拘縮とは、関節の可動域が制限され、正常な動作ができなくなる状態を指します。寝たきりの方や、長期間同じ姿勢を続けることが多い方に良く見られます。
拘縮が生じると、日常生活で必要な動きや介助ができなくなったり、ケガや皮膚トラブルが起きやすくなったりするため、生活の質が低下するリスクが高まります。
予防のためにはリハビリが有効だとされていますが、注意点をおさえながら行わないと、逆効果になったり、思わぬケガにつながったりする可能性もあります。
今回は、拘縮予防のリハビリで注意するポイントを中心に、拘縮そのもののリスクについて作業療法士の視点からまとめました。
拘縮の原因
拘縮は、腱・靭帯・皮膚・脂肪組織・血管・筋組織・末梢神経組織といった軟部組織の異常によって関節が正常に動かなくなった状態をいいます。
拘縮の種類は、抹消神経や中枢神経系の疾患が原因で起きる神経性拘縮と、筋肉の可動域制限による筋性拘縮の2つあります。
何らかの理由で、2週間ほど関節の固定や動かない状態が続くと、拘縮が徐々に進行し始め、4週間以上になると、組織の癒着によって症状の改善が難しくなります。
拘縮の主な原因は、以下の通りです。
- 寝たきり、疼痛、浮腫などによる長期的に動かさない・動かせない状態が続いた
- 火傷、外傷による皮膚組織の短縮によるもの
- 靭帯損傷後
- 脳卒中後遺症などによる運動麻痺によるもの
- 筋緊張の亢進など
寝たきりの方に起きやすい拘縮は?
拘縮が起こる原因には、以下のようなものがあります。運動不足筋肉を十分に使わないと筋力が低下し、筋肉が硬くなってしまい、拘縮が起こりやすくなります。血行不良になることで筋肉や関節に十分な栄養や酸素が行き渡らないと、筋肉が硬くなってしまい、拘縮につながります。血行が悪いことで痛みが続いてしまうことも考えられます。病気や怪我病気や怪我で筋肉や関節が損傷したり、麻痺が生じたり、痛みを伴う炎症が起こったりすると、拘縮が起こりやすくなります。拘縮は、放置しているとますます悪化していきます。
高齢者の寝たきりに多い筋性拘縮
寝たきりが原因になって起きる拘縮は筋性拘縮と言われています。筋性拘縮は、筋肉の伸び縮みする機能が低下して硬くなってしまうことで、関節の動きも制限されてしまいます。
拘縮が生じてしまうと、日常生活で必要な動作ができなくなり、生活や介護をするうえでの制限が増えます。
放置しても問題ない?拘縮の危険性とは
拘縮が生じると筋肉や関節が硬くなり、体の柔軟性が失われてしまいます。この状態が続くと、さまざまな日常生活の介助に支障をきたすことが考えられます。
拘縮を放置すると、徐々に進行し、慢性的な痛みや床ずれ(褥瘡)、骨折などを引き起こす可能性があります。そのため、介助が困難になることもあるのです。
例えば、拘縮が進行して膝を伸ばす動作が制限された場合を考えてみましょう。動かせない範囲が生じることで、膝関節周囲の組織が硬くなり、神経や血管を圧迫することで痛みが生じる可能性があります。さらに、ベッド上で寝ている状態では、太ももやふくらはぎがベッドに接触しなくなってしまいます。体が宙に浮いた状態となり、接触している体の一部への負担が高まります。その状態で何も対策しなければ、踵やお尻のみで下半身の重みを少ない面積で支えることになってしまい、褥瘡を発生するリスクにつながります。
当然ながら、足腰の関節の動きが悪くなると、着替えやオムツの介助をするのも大変です。このように、拘縮は、さまざまな身体的な悪影響を及ぼしてしまうのです。
拘縮を予防するには、リハビリや日常生活での運動を取り入れることが重要です。
拘縮予防のリハビリで注意やポイントについて解説!
拘縮予防にはリハビリが有効ですが、注意点を知らずに行うと、思わぬ怪我につながることがあります。以下に注意点をまとめました。

拘縮を予防するための運動
拘縮を予防するためには、定期的な運動やストレッチが欠かせません。運動やストレッチを行うことで、力や柔軟性が増すため、関節の可動域が広がります。また、血行や体の機能改善も期待できるため、健康維持にもつながります。
ストレッチや筋力トレーニング、マッサージなどを行うことで、筋性拘縮の予防のみでなく改善できる場合もあります。
ただし、拘縮の状態によって、適切なリハビリ方法は異なります。そのため、拘縮が起こった場合には、医師や理学療法士の指導のもと、正しいリハビリを行うことが重要です。
拘縮予防のリハビリに取り組んでいる方は、リハビリ方法についてはある程度理解していることが多いと思います。しかし、リハビリを実践する際には、以下の点に注意してください。
正しい体勢で行うこと
運動やストレッチを行う際には、正しい体勢で行うことが重要です。特に、寝たきりや車椅子生活の方は、体勢が固定されがちなため、姿勢や関節の位置に注意が必要です。正しい体勢で運動やストレッチを行うことで、筋肉や関節に正しい刺激が与えられ、拘縮予防につながるのです。
正しい体勢でリハビリを行わない場合、関節を痛めてしまう可能性があります。例えば、肘関節は曲げ伸ばしのみが行える関節です。もしも、曲げ伸ばし以外の方向へ無理に動かしてしまった場合、靭帯などを痛める可能性があるでしょう。
急なストレッチは逆効果です!
過度な負荷をかけて関節を動かした場合、かえって筋肉が硬くなってしまうことがあります。「クイック・ストレッチング」と呼ばれるような急激なストレッチは、伸ばそうとしている部分の筋肉に力が入ってしまうため、適切ではありません。かえって手足が硬くなってしまうことが多いです。
過度な負荷を避けること
筋肉や関節を無理に伸ばしたり、負荷をかけすぎると、逆に拘縮を引き起こしてしまうことがあります。そのため、適切な負荷をかけ、徐々に負荷を増やしていくようにしてください。また、痛みや違和感がある場合には、無理は禁物です。
拘縮予防に効果的なのは継続的に行うこと
拘縮予防のリハビリは、継続的に行うことが重要です。一般的には「1日に1~2度、1度に3~5回、全可動域にわたる関節可動域運動を週に3回、または毎日行うことが必要である」とされています。リハビリを始めても、短期間でやめてしまうと十分な効果が得られないことや拘縮が悪化する可能性があります。継続的にリハビリを行うことで、筋肉や関節を健康な状態に保つことができるのです。
日常生活で取り入れられること
拘縮予防のためには、専門的なリハビリのみでなく、日常生活でも意識して筋肉や関節を動かすことが大切になります。
日常生活で取り入れやすい拘縮予防のポイントをいくつか紹介します。生活動作をする寝たきりの方は、ベッド上で体を起こしたり、車いすに乗ったりする生活動作を取り入れると関節や筋肉を動かすことにつながります。硬くなってしまった筋肉をマッサージすることで、大きな負担を与えずに血流をよくしたり、筋肉をわずかに伸ばしたりできるでしょう。温める筋肉や関節を温めると、血流が促進され、拘縮予防につながります。歩くのが難しくても、座る・立つなど軽い動作だけでも拘縮改善・予防に繋がります。介助してもらいながらでも構わないので、積極的に動作練習は行いましょう。
以上のように、日常生活でも簡単に取り入れることができる拘縮予防の方法があります。
しかし、拘縮が進行してしまった場合には、専門家の指導を受けながら、適切なリハビリを行うことが重要です。
寝ている状態や車椅子ではポジショニングが効果的
寝たきりの状態が続く場合は、クッションや枕などを上半身や下半身の下に入れ込み、こまめな体位交換をしながらポジショニングすることも重要です。
ポジショニングは、こまめな体位交換によって関節を動かす機会ができるだけでなく、身体にかかる圧力を分散させ、寝たきりによる褥瘡予防にもなります。
握り込んでしまった手は手浴を試してみてください。
硬くなった手をぬるま湯で手洗いをするだけです。手足の感覚障害がありますと、火傷をしてしまうことがありますので、高温のお湯で手浴しない様に注意してください。
1.洗面器や洗面台のボールに少しぬるめのお湯を(38℃)はります。両側の手を湯の中に入れ10分間の手浴を行います。
2.麻痺側の手から石鹸を付け、対象者(患者)に声をかけながら軽くマッサージするように洗った後、取り換えたきれいな湯の中に両手を浸します。
3.この後、手の中や指と指の間をタオルで水分をよく拭きます。
※足も同じ様にぬるま湯の中でマッサージすることで足の硬さが軽減することがあります。
まとめ
勢いをつけた急激なストレッチや、関節の動きを無視した運動を行うと、拘縮予防どころかかえって悪化を招いてしまう可能性が高いです。正しく拘縮予防のリハビリをするためには、姿勢や負荷、運動の頻度などのポイントをしっかりと抑える必要があります。
拘縮を放置していると、徐々に症状は悪化してしまいます。寝たきりの方のリハビリは簡単ではありません。難しいと感じる場合は、リハビリ専門のスタッフや主治医のアドバイスを受けて、適切な方法を心がけましょう。当店のリハビリではご自身でできる自主トレーニングをお伝えしています。最近体の固さが気になり始めたという方がいましたら、是非ともご相談ください。
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