太ももの骨を骨折(大腿骨骨折)の治療・手術・入院・リハビリについて

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こんにちは。Heratの 庭野です。今日は高齢者の転倒後に多い、大腿骨骨折について説明していきます。

大腿骨骨折の治療方法にはどのようなものがありますか?

病院に搬送されると、できるだけ早く手術が行われます。これは、骨折後の寝たきり状態による合併症の予防のためです。同時に生活動作再獲得の為のリハビリテーションも行います。
大腿骨骨折の治療や手術の方法も、患者さんの年齢や骨折部位のずれ(転位)の大きさ、そして軟骨のすりへり(関節症)などによって異なります。
どのような手術を行うかは、事前に医師に聞いてみましょう。

大腿骨骨折の治療法としては、①自分の骨をくっつける方法(骨接合術)と②人工物に置き換える方法(人工骨頭挿入術、人工股関節全置換術)の2つがあります。骨折の状態や、骨折の発生した部位などによってどちらの手術を行うかを選択します。

① 自分の骨をくっつける方法(骨接合術)

自分の骨をくっつける手術(骨接合術)は、できるだけ自分の骨を残すことが望ましいことから、ずれ(転位)があっても、整復後できる限り、ねじやピンを使用して自分の骨を接合する治療法です。

② 人工物に置き換える方法(人工骨頭挿入術、人工股関節全置換術)

人工物に置き換える手術(人工骨頭挿入術、人工股関節全置換術)は、血流が悪い部分に骨折が起きている場合や、ずれが大きすぎて骨折部がくっつかない可能性が高い方に行なわれます。

高齢者でも手術できますか?

基本的には高齢者の場合でも、手術を行ないます。
しかし、全身麻酔をすることや手術すること自体が原因で命の危険が大きくなると判断した場合などには、やむなく保存療法を選択することがあります。

手術をしなくても、動かさないようにしておくことで、数ヶ月たてば、痛みは薄らいできます。リハビリを行って、車いすに乗ることや、場合によっては片方の脚で立てるようになることもあります。
しかし、骨は癒合していませんから、怪我をする前の状態には戻らず、歩行能力は必ず落ちます。また、動けるようになるまでの期間が自ずと長くなりますので、寝たきりに伴う合併症もきたしやすくなります。

大腿骨の骨折をしたら歩けなくなりますか?

一般に手術をしたとしても骨折後の歩行能力は、例えば、普通に歩いていた人なら杖が必要になったり、杖で歩いていた人は車いすになったりといったように、1段階の能力が落ちると考えていただく方がいいでしょう。ただし、リハビリテーションの効果によって、それも大きく変わってきます。
本人の意欲や痛みの程度、体力、合併症、認知症の有無などのさまざまな要因が加わりますが、リハビリテーションはできるだけ早くから行う必要があります。

手術後に注意しておくことはありますか?

大腿骨骨折の術後は、次のような合併症に注意しておく必要があります。

感染症

ごくまれですが、手術部位に菌が入りこみ化膿することがあります。この場合は、再度手術して膿を取り除いたり、骨の固定に使用した器械の抜去が必要になる場合があります。一般に感染は術後1年まで起こるといわれています。入院中には、感染予防のために抗生物質の点滴を行い、定期的な血液検査を行って、感染が無いかどうかを調べます。
また退院してからも、手術部位の痛みが増強したり、赤く腫れ上がったりした場合は、主治医のいる病院へできるだけ早く受診することを忘れないでください。

脱臼

これは、人工物に置き換える手術(人工骨頭挿入術、人工股関節全置換術)の後(特に~6ヶ月後まで)に起こりうるものですが、脱臼は股関節を過度に曲げたり、捻ったりした時に起こることがあります。 ひとたび脱臼が起こると、繰り返して起こりやすくなるので注意しましょう。手術の方法によって、脱臼しやすくなる運動方向や運動の程度が違うので、主治医やリハビリの先生などから正しい動作方法を聞いておくことが重要です。頻回に脱臼する場合は、脱臼を予防する装具などをつけるときもあります。
術後3ヶ月以降は特に制限なく運動等も可能な状態になられる方が多いです。
当院では、気を付けないといけない運動に対して、どう動けばいいかが分かるように、パンフレットを用意しています。
また、当院で施行している人工関節は脱臼が少ない方法で行なっておりますので、術後3ヶ月以降は特に制限なく運動等も可能な状態になられる方が多いです。 

深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)

これも下肢の骨折、手術後に特に起こる合併症ですが、怪我をした後や、手術中・術後に体を動かさずに寝ていると下肢の静脈の流れが悪くなって血液の塊(血栓)できることがあります。血液の塊で血液の流れが更にわるくなって、ふくらはぎを中心に足が腫れたり、痛みを感じたりすることがあります。さらに問題なのは、その血栓が血流に乗って、肺や脳に流れ込んで血管を詰まらせることがあります(塞栓症)。これは命に関わる重篤な合併症です。これを予防する為に、血栓予防薬の投与、弾性ストッキングの着用などを行います。

高齢者の手術後に注意しておくことはありますか?

他にも高齢者に頻度の高い合併症(せん妄、認知症の進行、誤嚥性肺炎など)があります。

せん妄(せんもう)

せん妄は意識と認知の障害を特徴とするもので、急性・一過性・可逆性に見当識障害、錯覚、幻覚などを伴って精神運動興奮をきたすものです。高齢者やもともと認知機能の低下があった方、手術後などに起こります。夜間に症状がみられるものを夜間せん妄と言います。前兆となる症状をとらえて、環境の整備や早期に治療を行うことで改善が期待できます。

認知症の進行

認知症は、一度獲得した記憶や認識、判断、学習などの低下により、自己や周囲の状況把握、判断が不正確になり生活上支障をきたす状態をいいます。入院による環境の変化によって、認知症が進行することがあります。また、手術後、ベッド臥床期間が長くなることにより、活動性の低下・覚醒の低下などが起こり、認知症が進行することがあります。

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

誤嚥性肺炎とは、肺炎の原因となる細菌が、飲食物や唾液などと一緒に肺に流れ込み発症する肺炎の事です。食べ物をのどに送る舌などの運動機能の低下や、唾液分泌量の低下、嚥下反射やそれに関わる筋の機能低下によって、嚥下障害を起こしやすくなるのです。

手術の後は、体力も低下しやすく、ベッド上で寝ている時間の増加、誤嚥性肺炎が合併しやすいため注意が必要と言われています。

大腿骨頚部骨折のリハビリテーションではどのようなことを行うのですか?

手術後は、傷の痛みや、疲労が必ず起こるものだと思っている方が多いため、手術の翌日から立つこと車いすに乗ること、若い方では歩行許可などにびっくりされる方が少なくありません。もちろん手術の大きさにより違いはありますが、 最近は疼痛管理も重要視されており、様々な方法が取り入れられ、術後の痛みはかなりコントロールできるのでご安心下さい。

疼痛管理が発達したので手術の目的のひとつである、早期離床が可能となりました。早期離床の最大の利点は、ベッドから離れる行為自体が全身の筋肉を使うという点です。全身の筋肉を使うと、体の中に流れる血流もはやくなり、全身の臓器に刺激がおこり、機能が回復しやすくなります。

寝たきりにともなう

認知症の進行

関節の固さ(拘縮)

筋力低下

免疫機能低下

その他多くの合併症が防げます。

ただし、患者さんの状態によっては、手術までの待機期間が長かったり、手術は成功しても合併症が起こったり、痛みがなかなかとれなかったりする方もおられ、歩行ができない場合もあります。
しかし、どのような状態の患者さんでも、大腿骨骨折におけるリハビリテーションはできるだけ早く取り組む方がよいとされています。無理なく我慢できる痛みの範囲で、手術前であってもなるべく上半身は起こす方がいいいですし、上肢や骨折していない足の運動もした方がいいといわれています。

リハビリテーションにはどのような種類がありますか?

リハビリテーションは、医師の指導のもと、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門家が訓練を担当します。
さらに、看護師、管理栄養士、社会福祉士などがチームを組み、ご本人やご家族も交えて、「チーム医療」によって、患者さん個人の具体的な治療計画の立案と実施が行われます。

リハビリ職種には、

  • 理学療法(PT)起居や歩行などの動作の改善に関するリハビリ
  • 作業療法(OT)更衣・排泄などの生活動作や家事動作、認知機能改善に関するリハビリ
  • 言語療法(ST)食事やコミュニケーション能力改善に関するリハビリ

があります。
患者さんの状態によって必要な職種が関わります。

術後のリハビリはどんなことをするのですか?

術後は、まずベッドから起きて、座る・立つ・車いすに乗る訓練やトイレに行く練習を行います。しばらく車椅子に座って、血圧などの変動がないか、食事をとることができるかなども見ていきます。
立位・立ち上がりがスムーズにできるようになったら、次は平行棒内歩行訓練となります。訓練の進行に合わせて、痛みが出やすい時期は決まっていますから、訓練時は、理学療法士が患部状態や動作状態を評価して、適切な運動量への変更や適した運動方法への改善など、その状況に合った調整をします。
もし、訓練をうける場合は、痛みや症状は遠慮せずに療法士に伝えてください。

歩行に慣れてくれば、最終的に歩行器~杖歩行訓練に移ります。必要があれば、屋外を歩く練習も行っていきます。

長期間の安静が続くと。。。

転倒予防

厚生労働省から転倒予防の体操も紹介されています。こちらも参考になります。

まとめ

適切な時期に適切な治療を受けることで骨折後の寝たきりを予防することができます。急性期病院に入院し、手術やリハビリテーションを受ける必要があります。急性期病院では十分な改善が見込まれない場合、回復期病院に転院してリハビリを受ける方もいます。その後も力や体力が低下して歩くのが大変な場合は通院やデイケアなどでリハビリを継続することとなります。入院中は担当の医師・理学療法士・作業療法士・看護師・相談員等に相談し適切なリハビリテーションを受けてください。

当店では病院退院後、十分なリハビリを受けることができない方に向けて出張の自費リハビリを提供しております。初回体験も受付中ですので、ご相談お待ちしております。

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